韓国総選挙における民主・進歩派の勝利と新選挙制度の意義を踏みにじった韓国二大政党

投稿者 紅林 進氏

韓国で4月15日に、国会議員(韓国は一院制)の総選挙が行われた。新型コロナウィルス感染の厳戒下、66.2%という民主化後、二番目に高い投票率を記録した。結果は、与党「共に民主党」系が過半数を獲得するという圧勝であった。野党第一党の保守「未来統合党」は、幹部が軒並み落選するなど大敗した。詳しい選挙結果は下記のとおりである。

与党「共に民主党」」とその比例系列政党「市民党」:獲得議席数180議席(議席率60%)、小選挙区163議席、比例代表17議席(得票率33.35%)、

野党第一党の保守「未来統合党」とその比例系列政党「未来韓国党獲得議席数103議席(議席率34.33%)、小選挙区84議席、比例代表19議席(得票率33.84%)、

「正義党」(旧民主労働党系の社民勢力などが結成):獲得議席数6議席(議席率2.0%)、小選挙区1議席、比例代表5議席(得票率9.67%)、

「国民の党」(中間派政党):獲得議席数3議席(議席率1.0%)、小選挙区0議席、比例代表3議席(得票率6.79%)、

「開かれた民主党」(「共に民主党」で公認されなかった人々が結成):獲得議席数3議席(議席率1.0%)、小選挙区0議席、比例代表3議席(得票率5.42%)、

無所属:獲得議席数5議席(議席率1.7%)、小選挙区5議席

文在寅政権の新型コロナ対策がそれなりに成果を上げ、世界的にも評価されていることが、与党勝利の大きな要因であることは間違いないが、民衆のための政治を行ってきた、これまでの文政権の政策が有権者の信認を得られたとも言えよう。文政権をことごとく批判するだけの、野党第一党「未来統合党」に対しては有権者は厳しい審判を突き付けた。

今回の選挙で、「共に民主党」をはじめ、民主・進歩勢力が勝利したことは喜ばしいことだが、少数派政党にもそれなりの議席を与えようと昨年12月に比例代表制を一部取り入れた選挙制度改革をやったにもかかわらず、与野党とも二大政党は、比例代表に系列の新政党を作って、この新制度の趣旨を踏みにじる行為を行ったことは残念である。

元々、比例の比率が、日本の現行制度と比べても低く、小選挙区の比率が高い韓国の制度だが、民意を忠実に反映させ、少数派政党にも得票率に見合った議席を与えるためには、純粋の比例代表制一本にするか、ドイツ型の小選挙区比例代表併用制(基本的には、比例代表により議席配分が決まり、その中で、小選挙区での当選者から当選させてゆく制度。日本は小選挙区比例代表並立制で、基本的には、小選挙区と比例代表が独立して当選者を決め、しかも小選挙区の比率が高い制度て、ドイツ方式とは異なる)にすべきだと私は思うが、この問題は、日本でも同じで、与野党とも大政党は自分たちに有利な小選挙区制を変えようとしない。

韓国の新選挙制度導入は与党の大政党が少数政党にも有利になる(と言っても限界があるが)制度の導入を図ったということで画期的であったが、その新制度の意義を「共に民主党」は自ら骨抜きにしてしまった。(保守の「未来統合党」が先に、比例に系列新政党を出すという行為を行ったための対抗措置という面もあったにしても)

 なお韓国のこの新選挙制度はいわゆる「小選挙区比例代表連用制」に近いものと思われるが、この「連用制」の脱法行為の危険性にいては、かつて日本で1990年代に小選挙区の導入が議論された時に、日本の自由法曹団が警告していた。

 また、「日韓民衆連帯全国ネットワーク」(日韓ネット)のブログに、
「韓国総選挙で示されたキャンドルの民意」という詳細な分析の論文が掲載されています。

レイバーネットのMLに紹介されたものの再転載ですが、ご紹介させていただきます。

「韓国総選挙で示されたキャンドルの民意」