原発輸出

 

日本からの原発輸出予定国(含む、中止)*詳細は、国名をクリックして下さい。

 国 旗  国 名 現 在 の 状 況
   台 湾  2016年10月20日、台湾の蔡英文政権は2025年に「原発ゼロ」にすることを決めた。
日本企業が原子炉などを輸出し「日の丸原発」とも呼ばれた第4原発は14年に建設が凍結されている。
   ベトナム  2016年11月22日に原子力発電所の計画中止を正式決定。日本では三菱重工業や日立製作所が受注を狙っていたが、資金不足に加えて、福島第1原発の事故で住民の反対運動が強まり、原発計画を白紙撤回した。
インド 2017年に日印原子力協定を国会承認したものの、インドの原子力損害賠償法に、設備の建設や機器を提供した業者にまで原発事故の賠償責任が及ぶとの規定があるため、日立・三菱重工が原発輸出に慎重な姿勢である。
   リトアニア  日立が優先交渉権を獲得したが、政権交代で反原発を掲げる政党が第1党となったことなどから、現在も「凍結状態」に。
   トルコ  三菱重工やフランスのメーカー、アレバなどの企業連合が2013年、黒海沿岸のシノップ原発の建設契約で大筋合意した。現在は事業化調査段階で、着工スケジュールなどは未定。トルコは反対運動が激しい上、政情不安や地震対策など問題が多い。
   英 国  日立は2012年、英国の原発事業会社「ホライズン・ニュークリア・パワー」をドイツの大手電力会社から買収し、英国内で、原発を4~6基建設する計画を引き継いだが、進展がない状況である。

 原発輸出の問題点

世界史に残る地球規模で最悪の福島原発事故の収束がいまだに見えず、原発事故の原因も十分な検証がされておらず、いまだに多くの人々が被ばくの不安と恐怖に苦しめられているというのに、原発輸出の是非に関する議論もほとんどされないまま、原発輸出が遂行されていくのは許されません。
原発輸出は、ロシア、中国なども進めてはいるが、アジアの発展途上国では福島原発事故を踏まえてエネルギー政策を見直しつつあり、2025年までに脱原発を実現するための法律を成立させた台湾や、原発計画を中止したベトナムなども出てきつつあります。

しかしながら、政府は、未だに原発輸出を諦めず、原発輸出を推進するために、これからも私たちの税金である公的資金も投入しようとしています。

日本政府の原発輸出に関する基本姿勢

民主党政権は2010年6月にまとめた「新成長戦略」の一環として「原発のシステム輸出」を構想し、国外の原発建設の受注窓口として国際原子力開発株式会社を設立しました。
電力会社、メーカー、産業革新機構(官民出資の投資ファンド)の共同出資による同社は、ベトナムでの原発受注などに向けて事業を展開しました。また、海外への事業展開に慎重な姿勢をとってきた東京電力グループも、中長期成長宣言「2020ビジョン」のなかで、海外事業をグループ事業の柱と位置付け、原発輸出にも取り組む方向を示しました。原発輸出を積極的に進める姿勢を示し、戦後初めて、官民一体のフルパッケージ型原発輸出の方針を打ち出しました。2010年10月には、電力会社や原子炉メーカーなどが参加する原発輸出専門の新会社「国際原子力開発」を設立し、オールジャパンの枠組みを整えました。

しかし、2011年3月の福島第一原子力発電所事故は、こうした計画にとって大きな阻害要因となり、東京電力は5月に「2020ビジョン」を取り下げました。
自国で危険だと分かったのに、他の国に輸出し、原発をつくるのは構わないという政府の論理には驚くのみです。自民党政権に変わっても、この方針に変更はないどころか、安倍首相自らがトップセールスとして原発輸出のために各国を訪問するなど更に加速しているのが現状です。

原発輸出の問題点を箇条書きにしてみました。

1. 倫理性

先ず第1に挙げられるのは倫理的な問題である。甚大な被害をもたらした福島原発事故の全容も明らかにならず、その問題解決が今後も長期に及ぶというのに、 原発の他国への輸出など倫理的にも許されることではない。 三菱重工の佃会長も「自国で危ないと判断したものを海外に販売はできない」と発言している。企業の倫理からいっても、自国で受け入れられないものを、他国 に輸出するは許されない。

2.安全性

事故リスク、立地条件(冷却水確保や周辺人口)、施工・運転リスク、監視体制など 安全性の問題が発生する。さらに福島第1原発原発事故によって、被曝労働の実態や低線量被曝、内部被曝などのリスクも徐々に明らかになってきている。

3. 経済性

世界で建設されつつある原発は、コストの急騰と建設期間の遅延で、非常に大きな投資リスクとなっているのが実態である。また、放射性廃棄物の処理費用および巨額な事故処理費用の負担を考慮するとコストは非常に高くなる。

4. 放射性廃棄物管理

半永久的な管理が必要な使用済み燃料処分は日本でも未解決の大きな課題である。モンゴルを最終処分場にする計画など問題外。

5. 核拡散・テロのリスク

軍事転用・テロのリスクが大きい。 近年、ロケット弾や爆弾を使用したテロが頻発しており、原発はテロの格好の標的となる危険性がある。

6. 環境・社会影響

原発は温室効果ガス排出削減に寄与するなどと言われるが、ウラン採掘から原発の燃料とするまでの行程や原発が出す温排水問題など考慮すると削減効果は全くない。また原発建設予定の各地では住民移転などの問題も起こっている。

7.情報公開・市民参加

原発が輸入・建設されていく過程で原発に関する十分な情報開示がされているか、住民説明会や公聴会が公平性をもって開催されているか。各地で原発建設中止を求めて、抗議行動や署名活動が繰り返し行われている。

8.日本の公的資金投入

原発輸出には日本の税金もつぎ込まれ、得するのは、原子力ムラの人々と一部の企業だけでというのが実態である。また福島原発事故により、事故リスクの甚大さが明らかになった。事故が起これば国すなわち国民が賠償責任を負うことになり、国民負担に結びつく可能性が高い(日本国民が連帯保証人の立場)。十分な国民的議論もなく、公的資金を投入し、原発輸出を推進し続けることは大きな問題といえる。