第5回平和学習会

「平和憲法とこの国の自立を考える」輪読&勉強会 第5回

日時:2017年6月17日 14:00~17:00
場所:大阪南YMCAが
講師:澤野義一先生(大阪経済法科大学法学部教授)

1.「共謀罪」について
・共謀罪が深夜、強引に国会で成立させられた。非常に残念である。「テロ等準備罪」の法案という形で、テロを捕まえるという趣旨ですが、実質はテロに対処はできない内容のものです。テロ関係の対処する国際条約は12個あります。それ自体、日本政府は締結しておりますし、それに対する国内法もあってそれ以上は要らない。今回の「テロ等準備罪」は国際条約の関係で、日本と僅かな国が締結していないので、締結する必要があるとの説明ですが、その条約というのはテロ対策が目的ではなく、金融的な犯罪を取り締まる趣旨なのですが、政府は強引にテロ対策といって通過させた。277の犯罪が適用されており、テロ等に係るというのは少ない。本来は暴力団などを捕まえる名目なのですが、現実には政府を批判する市民運動とかが対象になるのでは。これまでの刑法の考え方ですと、犯罪行為が実際に行われた後に、犯罪捜査して逮捕したり、裁判にかけるという原則になっている。例外的に予備罪、殺人予備罪とか若干例外的に処罰するものがありますが、基本的には犯罪予備以前の準備行為を裁くという法律は今までなかった。犯罪を話し合った段階で捕まえることができるので、犯罪の捜査方法が変わってくる。日本では盗聴法が既にありますが、これまではNTTなどの建物の中で監視された形で警察が盗聴できるとなっていたのが、今や警察の中で自由に盗
できるようになった。例えば、沖縄で米軍基地をつくることに市民が反対運動をしようと計画を立てると、地図を買うとカンパを募ると、これらは準備行為になる。そういうことを相談したか、ネットで行こうと合意すると、共謀罪が適用される可能性がある。
・監視社会になる。警察が捜査令状なしに尾行したり、政府批判の勉強会をしているのではとのことで非公式の捜査が頻繁に行われるのではとの危惧がある。共謀罪という犯罪を成立させようと思うと、これまでの通常の警察の公式な犯罪捜査では運用できない。協議した、話し合ったことが合意なので、準備行為したかどうかは犯罪行為をしたかどうかの要件になるのですが、準備行為しようがしまいが、話し合っただけで嫌疑が生まれる。ここから捜査ができる。実際に有罪か無罪にするかは裁判の後の話である。裁判に掛ける前に、話し合いをしたかどうかを捜査できる。準備行為したかどうかは警察からみると重要でない。これがあったかなかったは、最終的に有罪か無罪にするときに裁判の時に決める話で、準備行為の前に話し合いをしたかどうかを警察は調べるのです。だからそこから犯罪捜査が始まる。そこで逮捕もできる。逮捕して後で嫌疑がないから無罪放免ですとなっても問題である。そこで捕まえてしまって取り調べをうけてしまうことが起こる。そこが怖い。
・何が犯罪になるかがはっきりしない。日本憲法では罪刑法定主義で、どういう行為をするとどういう処罰を受けるかを事前にはっきり明記しなければならない。そういうものに違反する。多分憲法違反になると思います。人権としては内心の自由、考えている事柄に立ち入ることで侵害する。考えていることを伝えるために集会を開くとかデモ行為をするという、表現、言論の自由(21条)を委縮させる、奪ってしますといことで人権侵害である。
1ケ月後に施行されるので、直ちに国会で廃止させないといけない。

3.「脱原発と平和の憲法理論」
 第Ⅰ部 原発に関する憲法・人権論 -脱原発による平和と安全―
第1章 原発に関する憲法論の不在と違憲論の提唱
Ⅳ 原発の違憲性(その2)-憲法9条侵害の違憲性
4 違憲の日米同盟の一環としての原発政策
・原発の存在、稼働というのは基本的人格権を侵害する。憲法の違反性。
・原発は核兵器に(戦力)に転用できるものなので9条にも違反する。
・原発は日米安保条約の観点からみても問題がある。日米安保条約は軍事同盟ですから憲法9条に違反する。日米安保条約とのからみで、原発政策も関係がある。一般の人は、日米安保条約と原発政策が関係していることには気が付いていない。日本の原発の歴史をみるとはっきりしてくる。原子力基本法(1955年)は日本の国会でつくられ、原子力の運用は平和目的に限定されていた。その時同時に日米原子力協定が結ばれている。日本国内の原子力基本法と日米原子力協定が表裏一体となって存在している。1988年に改訂された日米原子力協定には、米国の濃縮ウラン燃料を30年間購入することを義務付けられている。30年ですから2018年までです。その間は勝手に止める(脱原発)訳にはいかない。来年改訂時期を迎えるが、多分継続することになるであろう。これは大きな問題になってくるであろう。
・米国は「自国の安全保障に対する脅威の著しい増大」が日米間に生じた場合は、協定を停止できることになっている(日米原子力協定実施取極3条)。日本が日米安保条約を破棄するといえば、日米原子力協定は停止になり、濃縮ウランは日本に売らないということになり、日本の原発は動かせないという事態になりうる。これは財界にとって不都合であり、日米安保条約は止められないことになる。
・2012年に民主党の野田政権が原子力基本法を改正し、平和利用目的に、「わが国の安全保障に資する」という目的を追加した。
・日米安保条約は、10年経過すればどちらの国から一方的に止めますという通告ができる。別に損害賠償は発生しない。
・日米安保条約の代案は日本が中立国になることである。軍事同盟でない安全保障政策。代案がないと国民が納得しない。日頃から意識して代替案を考慮しておくことが必要である。
・安倍政権は日米同盟を重視する保守派である。保守派の中には日米同盟を破棄せよといのもある。これは自主防衛論です。核武装して中立国になる。
Ⅴ 原発違憲論提唱の今日的意義と課題?
原発違憲論を踏まえると、どのような意義が考えられるか
1 国内的背景と課題
① 裁判関係
実際の裁判では原発は違憲であるとの議論はあまりない。これまでそのような主張がなかったので、使われてこなかった。原発メーカー訴訟では全面的に主張した。違憲論が意識的に使われだせば、刑事裁判でも民事裁判でも有利になるのでは。
② 原発は憲法違反だということにすれば、国レベルでの原発禁止法が通り易くなるし、自治体では原発を禁止する条例の制定がしやすくなる。市民運動の中で提案されたのは、無防備平和都市条例の1つである、小平市の「非核都市平和条例案」の中に、核兵器関係のものを禁止するという規定もあった。澤野先生がこの運動に係わった。外国の例では、ロンドン、バークレイ等の非核条例があって、その中に核を禁止する内容がある。バークレイ市は、核兵器とともに原子炉、核燃料サイクルも禁止することが明記されている。
③ 「脱原発法制定全国ネット」が2012年に提案した「脱原発基本法案」の制定も求めることができる。残念ながら議員立法で出されたが、国会で審議にまでに至らず。ドイツでは2022年までに原発を全廃する脱原発法を成立させた。
オーストリアは、非核憲法を制定した。
④ 日米安全体制の関連では、原発推進関連法を廃止し、原発禁止法を制定するには、原発推進関連法と不可分の日米原子力協定を破棄することが必要であり、日米安保条約からの離脱が必要になる。それには、日米安保体制の代替を考えておく必要がある。
 2 国際社会に向けての意義と課題
核兵器の使用については国際法に違反するのではないかといわれたりするが、原子力についてはまだそのような認識はない。その理由の一つとして、NPT条約があります。これは5大国だけは核兵器の製造、保有を認めるが、それ以外は平和利用だけを認めるもの。NPTがあるため平和利用の権利があるとの認識になっている。この認識を変えるためには、各国の内部から原発は人権侵害を引き起こすし、たいがい憲法違反になるとの主張をどんどん国際社会に提案していく形がないと多分むりであろうと思う。究極的には「核兵器禁止条約」と同時に「原発禁止条約」を車の両輪として締結することが望まれる。そうならないと原発の輸出入が現状は野放しになっているのを規制できない。
今国会で由々しき条約が承認されました。それは日印原子力協定で、日本はインドに原発をつくることに協力すると条約です。

第2章 原発に関す論 -と生命権的人格権論の意義と検討課題
   Ⅰ はじめに
原発の稼働を差し止める実際の裁判、注目された福井の大飯原発地裁判決を素材にし    て、どのような人権論、根拠が示されているのか、原発を差し止める必要性の理由を示しているのかを判決に即して検討した。

以上

   2017年9月12日 井上浩氏記録