第3回平和学習会

平和憲法とこの国の自立を考える」輪読&勉強会 第3回

日時:2017年4月15日 14:00~17:00
場所:大阪南YMCA
講師:澤野義一先生(大阪経済法科大学法学部教授)

1.「日本の青空」映像(ダイジェスト版)鑑賞
・鈴木安蔵をメインに「憲法研究会」、GHQ,政府等の関係を織り込みながら憲法成立過程を再現している
(1)鈴木安蔵
・「憲法研究会」の七人の中で鈴木だけが憲法学者。クリスチャン。
・京大哲学科入学後、河上肇の影響を受け、河上の居た経済学部に転じる。そこで社会主義の研究をしていたが、社会主義を研究すること自体が危険であるとして「京都学連事件」で一番最初に治安維持法を適用され検挙される。その後退学する。
・明治の自由民権運動家の憲法案の発掘(植木枝盛ら)、研究を行い、その成果が日本国憲法草案に活かされている。
(2)「憲法研究会」
・日本で一番早く民間人として7名が憲法草案を作り上げ、1945年12月暮に日本政府、GHQ、報道機関に配布した。日本政府は無視した。
・GHQでは直ちに英語に翻訳し読みまわしされた。日本政府が書いてきた草案は明治憲法と変わらないとして、「憲法研究会」の草案をベースにした憲法を1週間程度で作成。
・天皇は「国家的儀礼ヲ司ル」として儀礼的な天皇制の存続を認めた。一気になくすことはできなかった。
・基本的人権は「憲法研究会」案が影響していると言える。
・国民主権も「憲法研究会」案が影響している。
・戦争放棄は「憲法研究会」にない。軍事に関することはない。幣原首相とマッカーサーの合作という説もありますが、定説はない。私(澤野)はポツダム宣言を憲法化したと考えている。6項目「軍国主義勢力の排除」。9項目「軍隊の解体」を憲法化すれば、一切の戦力放棄になる。
・マッカーサーの3つのメモ
天皇を残す、戦争放棄、封建制度の廃止
(3)日本憲法の押し付け論
GHQが一方的に日本に憲法を押し付けたと一般的に言われているが、これはかなり問題がある。占領されており、新しい憲法をつくるようにと言われたのですから、それだけを見ると押し付けられたという事実はある。しかし、中身を見ると鈴木安蔵の研究した成果が相当入っている。その元になっている植木枝盛のものがベースになっている。戦争に負けたことによって戦前につくられていた民間人の憲法草案が復活したのが今の憲法であると理解した方が良い。
(4)天皇について  
・明治憲法でも天皇についてはガチガチのものではない。明治になってから天皇をどうするかは大きな課題であった。明治憲法の解釈も、時により変更がある。天皇は元首で、近代的な立憲主義ではない。外見的立憲主義といわれる。明治憲法でも天皇も従う。第4条「天皇は、国の元首であって、統治権を総攬し、この憲法の条規により、これを行う。」
・美濃部達吉の天皇機関説は、1930年代になると不敬罪、天皇を侮辱するものとして排撃された。天皇は憲法を超えるもの(天皇主権説)と考えるようになった。
天皇機関説は、危険思想で発禁思想とし、学校の教え方も検閲するようになった。
・戦後は国民主権で、天皇を残すとすれば象徴。
・天皇の国事行為は憲法に明記してある。問題になるのが憲法に明記してない行為、慰問、海外訪問等、が広くなってきている。自民党の改憲案はそれを広くしている。
・最近の八木秀次(法学者)の考え方
国民主権であるが、その根底には国体がある。天皇と国民は一体である。

3.「脱原発と平和の憲法理論」
 第Ⅰ部 原発に関する憲法・人権論 -脱原発による平和と安全―
第1章 原発に関する憲法論の不在と違憲論の提唱
 Ⅰ はじめに
原発を憲法違反とする考え方に至ったきっかけを述べている。
原発を憲法違反と言う人はほとんどいなかった。
1955年の原子力基本法で軍事利用はしなく、平和利用である。平和目的であるので憲法の問題であるとの意識がなかった。当初は原発を広島に造る話があった。憲法9条擁護論者も平和利用は問題にしなかった。核と原発は一体として考えるべきであるが、これまで別に考えてきた。
当時は学術会議も反対しなかった。
Ⅱ 原発違憲論に関する従来の議論状況
1 原発違憲論不在の背景ないし理由
2 先駆的な原発違憲論と原発廃止論
3 福島原発事故以降の原発違憲論

4.質疑応答
 (1)裁判で敗訴が続いている。司法が機能していない。どうしたらよいのでしょうか
最高裁の判決は原発を容認するもの。下級の裁判官はそれに沿った判決を下している。福島事故以降差し止めができると判断した裁判官がでてきた。しかし、最高裁は人事で裁判官を変えてきている。最高裁の15名の裁判官は全て安倍政権を忖度する裁判官になっている。安倍政権は原発輸出を経済政策の柱の一つにしている。
(2)ビキニ被ばくの問題
第5福竜丸のビキニ環礁の被ばく事件は、原爆の廃止運動にはなったが、原発廃止にはつながらなかった。原発は電気を作る社会に良いものだとの認識。
(3)日本国憲法は、人権憲法と思っている。人権を守るためには平和が必要。
人権という所だけだと世界の多くの憲法と同じである。
平和に生きることが人権である。平和に生きることが人権とはみなかった。
一番新しい動きは、国連人権理事会で「平和への権利宣言」を作成する動きがある。昨年の12月に「平和への権利宣言」を採択しました。賛成は131ケ国で日本は反対した。

2017年5月23日 井上