第1回平和学習会

「平和憲法とこの国の自立を考える」輪読&勉強会(第1回)

日時:2017年2月18日 13:30~16:00
場所:大阪南YMCA
講師:澤野義一先生(大阪経済法科大学法学部教授)

1.教材
澤野先生の著書「脱原発と平和の憲法理論」
2.進め方
一人が教材を読み、質問、議論等を行った。
3.今回の教材の範囲
序章 日本国憲法の平和主義と各国憲法の平和・安全保障方式
Ⅰ はじめに、Ⅱ日本国憲法の平和主義の特質、Ⅲ各国憲法の平和・安全保障方式、
4.内容
Ⅰ はじめに
・本著書の目的を述べている。
・日本と世界各国の「平和憲法」(憲法の平和条項)に関する比較憲法考察を行い、日本国憲法の「平和主義」の特質を明らかにし、世界平和樹立に向けての平和・安全保障方式を提案する。

Ⅱ 日本国憲法の平和主義の特質
1 平和主義憲法の特質
・日本の「平和憲法」と外国の「平和憲法」を区別するために、日本国憲法を「平和主義」、外国のを「平和愛好主義」と峻別(田端忍氏の見解)
・「平和主義」は、無抵抗主義を含む絶対非戦主義。一般的には「非暴力抵抗」までも否定するものではない。
・「平和愛国主義」は、侵略戦争等の一部戦争を否定する現段階の国際法に相応する各国憲法。戦争を全面に放棄するものでなく、軍備または戦力を放棄するものでない。

2 平和主義憲法に対する異説
 ・長谷部恭男説
非武装主義や非暴力主義を否定し、一般世論の常識から受容されそうな「公共財としての最小限防衛力」を容認する。
西修説
世界の多くの国の憲法には「なんらかの形で平和主義規定が設けられており、平和主義憲法は日本だけの独占物でない」
西説では憲法9条の解釈論としては、自衛のための戦争と、戦力を肯定する芦田均・佐々木惣一郎説を支持。

3 平和主義憲法の内容
・日本国憲法は単なる「平和憲法」でなく「平和主義憲法」である。
恒久平和主義、平和的生存権保障、国際協調主義、全面戦争放棄、紛争非武力的解決、軍事力および交戦権の完全放棄
・日本国の憲法規定には戦争と軍事に関する事項を想定しうるものが全くない。
宣戦講和規定、国家緊急権規定、兵役義務、良心的兵役拒否規定、軍法裁判所規定などがない。軍事にかかわる者の大臣資格が禁止されている。
・しかし現在の実態は、1950年代以降の政府による再軍備と日米安保体制の強化により違憲の憲法適用と、それを正当化する憲法解釈が行われている。

Ⅲ 各国憲法の平和・安全保障方式、
1 国際平和推進の理念の提示
・第2次大戦前の「平和憲法」では「平和」の表現はあまり使用されていない。
大戦後の憲法の多くは、国際平和推進を目指す一般的・抽象的理念を掲げている。

2 戦争放棄
・各国憲法は限定的戦争放棄(侵略戦争放棄)にとどまり、自衛権に基づく自衛戦争は容認。
・侵略戦争放棄が国際社会で一般的に承認されたのは、1928年の不戦条約
「国際紛争を解決のための戦争放棄」、「国家の政策の手段としての戦争放棄」、「紛争の平和的手段による解決」。
「国際紛争を解決する手段としては」の文言は、武力の威嚇と行使のみに関係し、戦争放棄に関係していない。
・日本国憲法は、国際紛争解決の手段として戦争放棄とそれ以外の武力行使なども禁止している。

3 国際平和協調と主権委譲・主権制限
・第2次大戦後、国際紛争解決の手段としての戦争武力行使を否定し、国際平和協調の具体化として国際機構への主権移譲(ドイツ)ないし国家相互の主権制限(イタリア、フランス)を規定する憲法が登場
・憲法改正により、欧州連合へ主権や権限移譲(スゥーデン、フランスなど)

4 軍備の保持と不保持
・日本以外の外国憲法での軍備保持を全面的に禁止したものはない。
・リヒテンシュタイン、コスタリカ、キリバス、パナマは、平時の常備軍不保持を明記。ただし、有事のさいには再軍備が可能とされている。
・世界で27カ国が事実上軍備を保持していない。
しかし、多くの国は軍備不保持をカバーするため、NATOに加盟したり、アメリカ国防の権限を委ねていたりしている。
以上

2017年3月31日 井上浩氏