リトアニアの原発

リトアニアの原発
Lithuania

日立が優先交渉権を獲得したが、政権交代で反原発を掲げる政党が第1党となったことなどから、現在も「凍結状態」に。

【リトアニアの原子力発電所建設計画】

リトアニア 人口330万人。ロシア系は5%でバルト三国の中で最もロシア系が少ない。面積は東北地方と同規模の約6万5千平方キロ。1990年にソ連からの独立を宣言。2004年に北大西洋条約機構(NATO)と欧州連合(EU)に加盟。 リトアニアは、86年に大事故を起こした旧ソ連チェルノブイリ原発と同型だったイグナリナ原発(2基)を09年末に閉鎖していたが、それ以降、ロシアからの天然ガス輸入に依存し電力料金が値上がりした。政府は現代の標準レベル以上の福島第一原発の旧式なモデルよりもっとパワフルな1300メガワットの原子炉を求めて、12年3月、日立製作所と、リトアニア北東部で計画されているビサギナス原発1基の建設について、仮契約を結び、暫定合意し、2020年の運転開始を目指していた。

【ビサギナス原発】

首都ビリニュスの北東約150キロ、ベラルーシとラトビアの国境沿いに位置するビサギナスは75年に造られた人工都市です。 20年の運転開始をめざす。改良型の沸騰水型炉(ABWTR)で、出力は130万キロワット級の予定。閉鎖されたイグナリナ原発の隣接地に建設し、費用は68億ユーロ(約6800億円)とされます。日立製作所は12年3月に事業権付与契約に署名、6月にリトアニア国会が賛成多数で承認した。エストニアやラトビア、米企業のゼネラル・エレクトリック(GE)とも連携して建設を進め、リトアニア(38%)、日立(20%)、ラトビア(20%)、エストニア(22%)の出資で計画された。

【閉鎖されたイグナリナ原発の歴史】

83年に1号機が稼働。電力はソ連式の送電網で供給され、2号機、3号機の工事が進んだ。ところが、86年にチェルノブイリで原発事故が起こる。イグナリナ原発はチェルノブイリと同型の原子炉を有していた。2号機はそのまま建設が続行され、87年に完成。イグナリナ原発は2つのチェルノブイリ型原子炉が稼働したまま、91年のソ連崩壊を迎えた。リトアニアは独立後もソ連からこの原発を受け継ぎ、ビサギナスにはソ連出身の専門家が残った。同原発は国の電力供給の7割超をまかない、近隣諸国に余剰電力を輸出さえしていた。ソ連に占領された屈辱の歴史を繰り返さないためにも、リトアニアはEUに接近。03年の国民投票で、91%の圧倒的多数の賛成により加盟を選んだものの、EUはチェルノブイリ型原発を保有しないことを加盟の条件にしていた。結局、リトアニアは加盟と引き換えに、イグナリナ原発の閉鎖を受け入れた。「

【原発建設に関する国民投票】

国民の多くが原発建設の費用対効果への疑問や原発事故への不安から、原発反対に傾いていることが世論調査で判明。2012年10月14日、国会議員選挙とともに原発新設の是非を問う国民投票が実施され、結果は建設反対が6割を超えた。
国民投票に法的拘束力を持たないが、同時に行われた議会選挙で社会民主党が勝利し、新しい首相が原発建設の見直しを行い、正式に計画が凍結され、事実上の計画撤回といえる。