インドの原発

インドの原発
India

【インドの原子力発電】

インドは、アジアで最も早く原子力研究開発に着手した国であり、45年には、タタ基礎研究所が設置されました。69年に初めての原発としてタラプール1・2号機(各16万kW、米国GE社製BWR)が運転を開始しました。 インドの原子力開発計画は、インド国内にウラン資源が乏しく、品位も悪いことから、豊富なトリウム資源を有効に使う「トリウム・サイクル」路線を、40年以上にわたり、一貫して遵守しています。
インドは、現在7箇所に21台の原発を操業しており、一基当たりの出力が20万㎾前後と小規模原発が多いのですが、最新のクダンクラム原発1号機は100万㎾で、今後は大規模原発を建設する計画です。日本は2016年、インドへの原発輸出を可能にする日印原子力協定を締結。
インド政府は、最近原子力発電所10基を増やすことを決めました。東芝の米原発子会社ウェスチングハウス(WH)が6基の建設を計画するが、経営破綻で先行きが不透明になっており、国産原発の増設で急増する電力需要を自力でもまかなっていく方針だ。インドでは現在、各地で地域住民による反対運動が激しく展開されています。

【加圧水型重水炉(PHWR:pressurized heavy-water reactor)について】

インドに現存する発電プラントの大半は、カナダAECLとインドのNPCIL(Nuclear Power Corporation of India Ltd)が共同開発した加圧水型重水炉(PHWR)であり、濃縮ウランを必要としません。NPT非締約のインドは、可能な限り自国の技術と資源で自立が可能なように、原発と核燃料サイクル技術の開発を進め、共同開発したラジャスタン1号機以外はすべてインド原子力発電公社(NPCIL)の国産技術です。発電炉ではトン単位で使用しなければならない重水は、天然水中に微量(0.015574%)しか存在せず、高価です。重水炉は軽水炉よりプルトニウム、トリウムの生産効率が高く、濃縮工場無しで兵器転用が可能で、核拡散リスクが高いのです。インドではCANDU炉で生成したプルトニウムから原子爆弾を製造しています。

【インドの原子力発電所】

☆クダンクラム原発
クダンクラム原発は、88年、当時のゴルバチョフ・ソ連共産党書記長が建設協力に合意したが、ソ連の崩壊で一時は消えかけた「冷戦の亡霊」のような原発である。04年末のインド洋津波で被災したインド最南端の沿岸部に建設がほぼ終了。第1期の2基の稼働が間近とされ、稼働のために必要となる燃料を運び込む作業が始まった。原発の運転開始に反対する住民らの激しい反対運動が展開され、11年に予定されていた稼働開始がずれ込んでいる。稼働直前になっても環境影響調査や安全性評価の報告書などが公開されず、公聴会もろくに開かれない。住民らでつくる「反原子力国民運動(PMANE)」によると、ここで使われるロシア製原子炉は圧力容器の中央に大きな溶接部があると分かり、更に不安が広がっている。12年9月にも大きなデモが行われた。こうしている間にも、相変わらずペースが遅いとはいえインド国内では着々と原発建設が進んでいる。ロシアの協力によるインド最大のクダンクラム原発2号機(タミルナドゥ州、1000メガワット)は2016年7月に核分裂反応が安定的に継続する「臨界」に到達、2017年1月下旬には最大出力での運転試験を実施しており、2017年内にも商業発電を開始してインド22基目の原発となる見通し。クダンクラム原発では昨年10月、3、4号機の建設に向けた準備作業もスタートしている。

ロシアはこのほか、クダンクラム5、6号機を含む計12基の原発建設に協力することでインド政府と基本合意している。

☆ジャイタプール原発
ジャイタプールは、経済的な中心都市ムンバイの南400キロほどに位置する。計画されている93億ドル(約7300億円)規模の原子力プロジェクトは、インドに限らず世界中から注目を集めている。欧州加圧水型炉(EPR)6基のうち最初の2基の建設契約を、フランスの原子力大手アレバと結んだ。発電能力1650メガワットの原子炉6基を設置し、総発電量は世界最大の柏崎刈羽原発を25%上回る。電力は近隣の農村だけでなく、インドで最も経済発展が進んだマハーラーシュトラ州全域に供給される。
福島事故後は、インド全土の環境保護活動家が立ち上がり、反対運動が大きな広がりを見せた。建設予定の沿岸地域は5段階の地震危険度で第3のランクとの指摘もある。12年4月にはデモ隊と警察が衝突し、漁師1人が死亡、負傷者も複数出た。

【インド原発の事故例】

☆2004年マドラス原発
04年のスマトラ沖地震でインド南部にあるマドラス原発では、津波でポンプ室が浸水するトラブルが起きていた。津波に襲われたマドラス原発は22万キロワットの原発2基のうち1基が稼働中だった。警報で海面の異常に気付いた担当者が手動で原子炉を緊急停止し た。冷却水用の取水トンネルから海水が押し寄せ、ポンプ室が冠水。敷地は海面から約6メートルの高さ、主要施設はさらに20メートル以上高い位置にあった

☆93年3月ナローラ原発
北部のガンジス川のほとりに建つナローラ原発で起きた重大事故を引き合いに、原子力の危険性を訴える。この事故では高速蒸気タービンの翼が折れ、火災が発生。福島と同様に停電が起こり、炉心の過熱が進んでメルトダウン寸前まで達したという。

☆12年6月・7月ラジャスタン原発
定期点検中に、5号機で作業員38人が放射性物質トリチウムを大量に吸い被ばく事故が起きた。
また7月中旬にも点検作業中に更に、放射性物質がポンプから漏れ出し、作業員4人が被ばくした。

【インド原子力発電公社(NPCIL)】

インドでは原子力省(DAE)が直接、原子力発電プロジェクトを立案・運営していたが、87年9月にNPCILが設立された。インド政府から予算支援は受けていなません。
NPCILでは、熱中性子炉による原子力発電所のサイト選定、設計、建設、試運転、運転、保守、改造、寿命延長、廃止措置を担当している。原発の建設に当たっては、NPCILの基本設計を基に、総合重電機器メーカーが詳細設計、製造、据付を行い、建設工事に関しては、建設会社に発注しています。
ラジャスタン1号機、高速増殖実験炉(FBTR)、ならびに高速増殖原型炉(PFBR) を除くインド国内のすべての原子力発電所を所有している。
注)ラジャスタン1号機はDAEが所有し、運転はNPCILが行っている。FBTRは所有者・運転者ともDAEである。PFBRは、バラティヤ・ナビキヤ・ビジュット・ニガム公社(BHAVINI)が建設・運転・保守を行う。

【インドの原子力損害賠償法(CLND)2010】

インドが2010年に施行した「原子力損害賠償法(CLND)2010」は、世界で唯一、事故に際してサプライヤーつまり原子炉メーカーに賠償責任を負わせる規定です。この背景にあるのが、未確認も含めて2万人以上の死者を出したとされる1984年のユニオン・カーバイド工場(印中部マドヤプラデシュ州)の有毒ガス漏洩事故です。

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